迷わず行けよ行けば迷うさ

今回はモスクワ旅行に向けての準備ダイジェストをお届けします。
 B月最終週
とりあえず一人旅が確定したので、旅行会社に見積もりをメールで依頼。
翌日からパスポート申請、クレジットカードを作成、スーツケースを買ったり、ロシアの情報を調べたりと、普段ボ~っとしている私には、怒涛のごとき日々だった。
長い年月、引きこもりを繰り返して、社会とあまり関わらず生きてきた無知さを思い知らされる。
みんな、こんな面倒なことをして大人の階段上ってきたのか。
いや、単に私が何もしてこなかっただけです。今も大人の階段の踊り場に無期限停留中。 

C月1週目・2週目前半
その日のシステマの稽古は、久しぶりに古株のSさんが来ていた。SさんはA月にモスクワ本部行って、帰国後はじめての稽古だそうだ。
モスクワに行くことは先生に一人だけに報告するつもりでいたのだけれど、「モスクワ」という言葉につられて、うっかりSさんに「D月にモスクワに行こうと思っているんです。」と漏らしてしまう。口が滑った…と後悔して話をそらそうと言葉をさがしていると、Sさんから思いもよらぬ言葉が返ってきた。
「じゃあ、モスクワの色々な情報、教えてあげるよ。」
私はそれを聞いて「新婚さんいらっしゃい!」の桂師匠さながら、椅子から転げ落ちそうなほど驚いた。実際は武道場に椅子はないですけど。(もちろん山瀬まみもいない。)
とにかく、私はものすごく、びっくりした。「気をつけて行って来てね。」程度で、会話が終了すると思ったからだ。
自分はシステマ内において、「危害はない透明な何か」といった存在として認知されていると信じていた。
わかりやすいイメージで言うと、ベジタリアンプレデターみたいな。(わかりにくいよ!)
頭の中で逡巡する。思い返せば、私はシステマの様々な場面で、いろいろな人に、数々の厚意を賜ってきた。ちゃんとした「人」として。
それなのに、それなのに、私ときたら。後ろ足で砂かけるような事ばかり。
本当に鈍い。身体だけじゃなく心までも鈍い。
草食系プレデター、自己嫌悪す。 

C月2周目後半
ロシアの治安について調べる。
日本より治安がよくない事はわかっていたけれど、その中で私を一番おびえさせたのは「スキミング被害」だった。
ATMにカードを入れただけで自分のお金がごっそり盗まれるという恐怖。(しかも人生で初めてクレジットカードを作ったばかり。)
安全策のため滞在中は現金で支払いを考える。ところが、一人旅の情報サイトには、こぞって「現金の持ち歩きは危険!」「現金は盗られたらまず戻ってこない。」と書いてある。
いやいや、現金ならその場で盗まれた額が被害総額だけど、スキミングされたら、はるか彼方の日本の貯金までごっそりもっていかれてしまうよ?とモニターに説教した。もちろんモニターからはなんの反応もない。
ネットでキーワードを変えながら四苦八苦して調べたけど、微妙に外れたものが多く、欲しい答えになかなかたどり着かない。
結局、Sさんに相談した。
海外旅行の経験豊富なSさんによると、ロシアのモスクワはかなり治安が良い方で、何度もATMを使用したけれど被害はなかったという。お金を下ろすのは大きなホテルや銀行のATMならまず大丈夫、とのことだった。ご親切にレートについての好条件の情報も添えられていた。
SさんはSNSを通じて、ほぼ毎晩、モスクワの情報を教えてくれた。不安が一枚一枚、剥がれていくのが、本当にありがたかった。
モスクワは私の想像より、ずっと治安が良いようだった。とはいえ今のところ、それは私の脳内ロシアであって現地はわからない。
気を引き締めて、治安の悪い地域に旅する場合のお約束アイテム。「ダミー財布」を用意した。
100円均一などで計4個。……どれだけビビリなんでしょう。
結局4個、すべて盗まれる事はなかった。したがって、現在、私の手元にはムダにお財布がいっぱいある。 

C月3・4・5週目
朝、駅に向かう途中で、胃のあたりがグウっとつかまれたような鈍い痛みに襲われる。立っていられなくなり、しゃがみこんでしまった。
何が起きている…!?まさかっ!スタンド攻撃ッッ!?
私はスタンド使いではない。スタンド使いの前で非スタンド使いは無力に等しい。
痛みで海老のように背中を丸めながら、考えた。
ジョジョの奇妙な冒険第4部のクライマックス。小学生 川尻早人はスタンドが見えないにもかかわらず、知恵と勇気と観察力で、殺人鬼 吉良吉影相手に見事に戦い抜いた。
スタンドが見えない私にだって、やれる!!
なんて決意もむなしく、結局、家族に電話して車で迎えに来てもらい、病院へ直行した。
その日は病院でMRI検査と胃専用の痛み止めをもらい、後日、胃カメラ検査を受けた。
まさかこのタイミングで人生初の胃カメラ。噂の喉ごしを味わう。
機材の改良や麻酔で昔に比べてましになったそうだから、以前の胃カメラはどんな拷問だったのだろうか。
幸い潰瘍などはみつからなかったが、急性のストレスによる一時的な胃痙攣という診断が下った。
初めての一人での海外旅行、誰もが不安になると思う。前の晩は眠れなかったとか、お腹を壊したとか、そういうエピソードを聞く。
不安が募って、胃カメラを飲むまでやらかしてしまった。(思わぬ出費!)
私は本当にそこまでしてモスクワのミカエルになぜ会いにいくのか。こっちから出向かなくても、年一回は日本にくるのに。
引き返すなら今だ……と思っていたら絶妙のタイミングで、旅行会社からビザ申請がおりた事と旅行費の納金のお知らせが来た。
そして、入金してしまった。もう後戻りできない。飛行機がスタンド攻撃で墜落しない限り。 

D月1週目~
D月に入ってからは、おびえる事にも慣れてしまい、もはや諦めの境地に達していた。
渡航準備も、ミカエルへのお土産を買いに行ったり、念のため少しだけユーロを用意したりといった仕上げのようなことだけになった。
ところで、私はスマホを持っていない。持っているガラケーは通話とメール機能のみで、しかも海外未対応の機種だ。
旅の情報サイトには、スマホがなければ旅が始まらない、とでもいわんばかりだった。
普段から持っていないものなので、スマホがない事に関しては、不安も不便という感覚もなかったが、言葉の通じない海外。保険程度に海外用携帯電話をレンタルしようかと調査を開始。検索中に、もらいものの「ipod touch」にwi-fi機能があることに気がつく。確かホテルはwi-fi free。これはしめたと思い、もって行く事にした。
持って行くついでに、ネットで集めたモスクワ本部への地図や、ロシアの電車の乗り方やATMの使い方、Sさんからいただいたアドバイス等、片っ端からipodに詰め込んだ。
しかし、これが後々、やっかいなこととなるのであった。
次回、いよいよロシアへ。ようやく旅行記っぽくなります。

 

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