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静寂は何を奏でる

異国でのはじめて朝。
時差のせいもあって、早めに目が覚めた。
モーニングコールは頼んだ時間より10分以上遅れて鳴った。
多分、今時モーニングコールを頼む人なんてほとんどいなくて、フロントの人も忘れていたのだろう。
電話の声が、心なしか申し訳なさそうだった。
セミナー一日目。これからモスクワ本部へ向かう。

 

この日は曇り。朝見るベラルースカヤ駅は夜とみたものと、印象が違う。 

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駅から本部に向かう場合には、跨線橋(こせんきょう)*1を通る。
そこから、昨日乗ったアエロエクスプレスが見えた。

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よく「敷かれたレールに乗った人生」という言葉がある。
型にはまったつまらない人生、という意味で使われる事が多いけれど、レールの上を走るのにも、脱線しないように注意がいる。分岐を間違えると、まったく違う目的地に行ってしまう。
そもそも、人生が楽しいかつまらないかは、その人生を歩む本人にしかわからない。それをどうして勝手に「つまらない」と断定してしまうのだろう。
誰にも他人の人生をジャッジすることはできないというのに。 

 

なんとか迷わずシステマモスクワ本部到着。

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敷地内

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犬小屋発見。

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出発前にSさんから「本部には犬がいる。」と聞いていた。
それを聞いて、私はその犬をスカコヴァヤ三郎(仮名)と勝手に名づけていた。
ステマの本部の住所はСкаковая 36(スカコヴァヤ 36)なので。
「ひとなつっこい犬だけど、ノミがたくさんいる。」という情報だったので、ノミをできるかぎり取ってあげようとピンセットを持参したけど、スカコヴァヤ三郎(仮名)はお留守でした。

  

ステマ本部入り口。

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「 Единоборства Древней Руси Система」と刻まれた看板がある。

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日本語に直訳すると「ロシアの古武術ステマ」。(ОФССОは訳せなかった。何か所属している連盟の略称?)

 

 

 建物内部 受付(?)

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「たのもーう!!」と言ってみたけど反応無し。(普通に挨拶しました。)
ズカズカ侵入。遠慮と言うものを知らないのか。

 

本部道場

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本部道場に一歩入ったとき、既視感があった。なんだろう、この感じは、と記憶の糸を手繰ると、それは初めてのシステマ体験で体育館の扉を開けたあの感覚だった。当然、そこに、ぼお~っとまちぼうけの先生はいない。(「先生」とは→私は「わからない」に出会う。その2  参照)
ここで初めて、私は一人なんだと実感した。 

私は一人、書いたけれど、出発前にSさんから「今、本部に日本から長期滞在でシステマを習いに来ているNさんという女性がいる。本部の事にも精通しているので、困ったら彼女に聞けばいい。」という連絡をもらっていた。
この時点でNさんはまだ来ていない。

 

時間が来るまで本部内をうろうろ。

お土産コーナーございます。

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金ぴかクマちゃんおりました。

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?????????????????????

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やがてぽつぽつと人が集まり始め、その中にNさんもいた。
Nさんの印象は一文字で言うと「清」だった。なんていうと、本人は否定するかもしれないけれど。
初対面の人だと、とてつもない挙動不審者となる私も、ちょびっとだけ挙動不審者くらいで対応できた。挙動不審は治らない。 

この日の参加者は20人くらい。
日本でミカエルのセミナーはだいたい150人前後、各地から集まる。
まずモスクワ本部所属のインストラクターの人が軽く指導した後、ミカエルが登場した。
この人が創始者 ミカエル・リャブコさん。

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細かく言うと色々あったけど、スティックメインのワークとなった。
スティックの握り方を変えながら本部道場内をぐるぐる回ること数分。
まったくシステマを習った事のない人(が、まさかこのブログを読んでいるとは到底思えませんが)のために解説しますと、システマのワークは回遊魚のごとく会場内を何かしながらぐるぐる歩き回るワークがあるんです。もはやシステマの名物みたいなものです。

ぐーるぐる。この写真の時はウィップ(鞭)を使ってぐるぐるしてます。

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やがてモスクワ本部でも人見知りへの恐怖の呪文「二人組みになってください」が唱えられた。
呪文によってモスクワ本部でも、やっぱりあぶれていると、ご親切にも、ロングヘアで線の細い青年に声をかけてもらい、組むことになった。
ワークの内容はプッシュアンドムーブ。(お互いの体を押し合って、その力の流れを知るワーク)
ワーク中に、ふと、下を見ると、彼の靴下がお寿司の柄だった。
気になって思わず彼に「何でお寿司なの?」と聞いてしまった。
一瞬、彼は「なんのこと?」という顔になり、私の目線を追って自分の靴下を見ると、その意味に気づきケラケラと笑い出した。
「なんで寿司なんだろうね。」
彼の線の細さにみあった細い笑いだった。
彼はまさか、イポーンカ(японка 日本人の女性)に自分の靴下の柄についてツッコまれるとは思ってもみなかったのだろう。
また場違いな質問をしてしまった。私は、本当にコミュニケーションの作法がなっていないと思う。

 

 これが噂の寿司柄靴下。

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インストラクターの口から「スパコーイ」という言葉を頻繁に聞いた。
「腕をスパコーイさせて…」という感じで「スパコーイ」は使われていた。指導の感じからすると「腕をリラックスさせて」だった。
ロシア語で「おやすみなさい」は「Спокойной ночи」(スパコーイニィ ノーチ)と言う。直訳すると「静かな夜を」。
インストラクターの人が言っているのが同じ「スパコーイ」なら直訳すると「腕を静かに」だ。
ステマロシア正教と密接だという。
ロシア正教には「静寂主義」というものがある。そして、静寂の中で、祈るための身体技法が存在するらしい。私が大山倍達の顔で大笑いしたあの日(おろしや国ひとり旅、確定す。 参照)、稽古中に先生から聞いた話だ。
日本での先生の話。
モスクワのインストラクターの“Спокойной”。
私は常々、日本でシステマのワークをする時、「リラックスして」「脱力して」と言われても、感覚がつかめなかった。不特定多数の人にわかりやすく説明するために「リラックスする」「脱力する」を使う事は、誤訳とは思わない。でも、私としてはそれを「静寂」置き換えると、すべてが腑に落ちた。
腑に落ちたところで、それができるかというと、そういうものではないけれど。 

予想はしていたけれど、結局、私はその場に馴染めず一日目は終了。
セミナーの後、本部のインストラクターの人にマッサージをしないかといわれた。
ステマには棒を使った特殊なマッサージ(スティック コンディショニングと呼ばれている。)がある。システマを習っている人だけではなく、一般のお客さんも通いにくるらしい。
日本からわざわざ来た私に、マッサージを体験してもらいたいのだろう。
興味はあったけど、お断りした。
そのマッサージを行う際の肌の露出は私個人のボーダーラインを超えていたからだ。(オイルを使用するため上半身脱衣する。)
それと、多少ましになってきたけど、私は人に触られるのが怖い。
Nさんからもスティック コンディショニングの効果はすごいから、是非本部で体験して欲しいとすすめられたが、私は、肌を露出できないことと、人に触れられるのが怖い事を告げた。
その時、Nさんは私の言葉にひっかかった表情をした。
気分を害してしまったのかもしれない。また余計なことを言ってしまったな、と後悔した。
そこで会話が終了すると思っていたら、彼女は少し間をおいて、「接触するのが怖くてもシステマ続けているのには、システマには何かがあると感じてるんですよね?」と言った。
その言葉に、心臓が一瞬、大きく鼓動した。
2年の間、システマがあまりにも上達せず、悩み、あがいていたのに、なぜか私は通い続けた。
ステマには帯による級や段がない。「黒帯をとるまでやめないぞ!」とか目標があったわけでもない。
あの呼吸で感じたクリアな感覚は、とっくに消えていた。その感覚をもう一度手に入れたいという思いも、もはや、なかった。
私にとってシステマは「何か」があったから続けていた。その「何か」について考えた事がなかった。
「何か」とはなんだろう?
でも「何か」の正体を知るために、モスクワに来たわけでもない。そこは重要じゃない気がした。
「人に触るのが怖いくせに、モスクワまで来ちゃうなんて、ほんと、なにしているんでしょうかね。」
動揺を悟られたくなくて、私はNさんに不貞腐れたような言葉を返した。
彼女はそれ以上、この話はしなかった。
「清」であり「静」の人でもあると思った。
その日の夕食は、Nさんとご一緒した。
食事に選んだ場所のは、ロシアの餃子「ペリメニ」の専門店。
ステマが詳しく書かれた小説「人生は楽しいかい?」に出てくる登場人物ゲオの大好物。(実際はゲオの好物は日本の餃子で「焼きペリメニ」という言い方で文中に出てきます。)
日本でもロシア料理店で食べられるけれど、やっぱり初めてのペリメニはロシアで食べてみたかった。
この量で足りるかな?と思ったけど、皮が厚くむっちりとしていてかなりボリュームがあって、美味しかった。

 

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ロシアでポケモン放映してました。

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ロシアでもポケモンGOは大人気だったとか。(Nさん情報)
それにしてもサトシくんは、小学生でありながらパートナーの女の子をとっかえひっかえしすぎていると思う。

 

 

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*1:線路をまたいでいる橋の事。

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